風に訊く 皐月 2021
今年は桜も早い時期から咲いてくれました。それに続いてたくさんの花々が
咲き誇っています。その中でも モッコウバラが私には目立つ存在となっています。
木香(もっこう)とよく似た香りでこのように呼ばれるそうですが、この花をみて
思い出されることがありました。昨年の今頃 毎日のように 訪問させて頂いていた
患者様です。食事がだんだんとれなくなって 点滴を必要とされていました。食事量が
減ったお母さまのためにご家族は色々工夫されて、好物のお刺身をペーストにしたり、
ミルクセーキやら甘酒やらとにかく 勉強熱心だし、調理器具にも造詣が深く頭が
下がる思いでした。熱が下がり 点滴が中止できたときは 本当に嬉しい経験と
なりました。再度、お食事量が減り、点滴が再開されました。最期のときに
お家の近くにはモッコウバラがたくさん咲いていました。
患者様の表情、笑顔、ご家族様の話し方や笑い声まで いまでも鮮明によみがえり
ます。もう一度、ご家族へ 元気な声を聞きに連絡をしてみようかな。
前田雅道