風に訊く 長月 2022
毎朝の楽しみは何といっても コーヒーになります。顔を洗い、少しは目を覚まし、
コーヒーを入れる準備に何となく進みだします。新聞を取りに行き、日によって
ゴミ出しもします。髭を剃ります。そして 今朝の豆を決め、挽きます。その香りを
かぐと 次に 緊張が生まれます。挽いた豆の上にやさしく浸みわたるようにそっと
お湯をそそぎます。しばらく待って次のお湯を注ぐたびに 目まぐるしく泡を盛り上げて
豆は躍動し、ドリップには濃い茶色の爆発がくりかえされます。表面の泡が底から湧いてくる
エネルギーで 次から次へと持ち上げられていくのです。まさしく 自然の躍動を感じ、
爽やかな空気が流れます。最後には お湯が十分豆たちにいきわたり、その後はゆるりと
豆たちを見つめ、仕上げの時を迎えます。
この一杯をあなたにもお届け出来たら......
前田雅道